管理職・役員の離婚問題について弁護士が解説

管理職や会社役員の方との離婚では、相手の収入が高いケースが多いため、婚姻費用や養育費についても一般的な事案より高額となりやすく、双方の主張が対立しやすい傾向があります。また、役員報酬や賞与の仕組みが一般の給与所得者と異なっていると適切な資料を集めなければ正確な算定ができなくなることもあります。

 

さらに、管理職や役員の方は、会社の福利厚生制度を利用した財形貯蓄や自社株の保有、生命保険への加入などを通した、複数の手段による資産を形成していることも珍しくありません。これらの財産がどこまで財産分与の対象になるのか、どのように評価するのかという点も、離婚条件を決めるうえで重要なポイントとなります。

 

本記事では、管理職・会社役員との離婚で問題となりやすい財産分与や婚姻費用、養育費などについて、離婚問題に注力する弁護士法人リブラ共同法律事務所の弁護士が法律上の考え方と実務上のポイントを分かりやすく解説します。

 

管理職・役員の離婚問題の特徴

会社の管理職や役員の地位にある方との離婚相談では、仕事に伴う以下のような特殊な事情が夫婦関係に影響しているケースが少なくありません。

 

✅長時間労働や休日出勤が続き、夫婦の会話が減った

✅転勤や単身赴任による長い別居期間があった

✅接待や出張が多く、家庭より仕事が優先されていると感じた

✅社内で責任の重い立場にあるストレスから家庭内で感情的になることが増えた

✅家族が把握しづらい付き合いが多い中で不倫関係を持ってしまい、信頼関係を損なった

 

管理職や役員はその立場上、家庭より仕事を優先せざるを得ない場面が出てきやすい傾向にあります。

その結果、家事や育児への参加が少なくなり、妻(夫)が「夫婦で負担の偏りを感じる」、「(子どもの進路など)重要な決定について相談できない」、「家族がないがしろにされている」と感じて離婚を考えることがあるようです。

他にも、一般の会社員より収入が高いことから、お金の使い方や資産形成に関する価値観・考え方の違いがすれ違いのきっかけになるケースも見受けられます。

 

管理職・役員の離婚問題の争点

財産分与

財産分与とは夫婦が共同生活を送っている間に協力して築いた財産(共有財産)を公平に分けるという制度(民法第768条)です。夫婦の収入額の差に関わらず、原則は財産の形成に対する貢献度は夫婦で等しいものとされ、基本的に5:5の割合で共有財産を分け合うことになります。

 

管理職や役員との離婚では、「相手の収入が高いから財産分与も多くもらえるはず」と考えられる方もいらっしゃいます。しかし、実際には財産の内容や取得時期、資産の名義などを一つ一つ確認しなければ、適正な財産分与額を判断することはできません。

 

財産分与の対象とならない「特有財産」の例

婚姻前から保有していた財産や相続によって取得した財産は「特有財産」とされ原則として財産分与の対象とはなりません。

 

会社の管理職・役員との離婚では、結婚する前から給与の一部を株式や投資信託の購入に充てる余裕があり相当額を積み立てていたケースや、親の経営する会社で役員を務めており、経営者からの相続で多額の財産を取得しているようなケースには注意が必要で、これらのようなケースでは共有財産と特有財産との線引き段階で意見が対立する可能性もあります。

 

✅退職金

給与や報酬額の水準が高い管理職や役員ですと、退職金も一般の会社員よりも高額であるケースが多く、財産分与の際は大きな争点になることがあります。

 

既に支給済みの退職金がある場合だけでなく、将来受け取る予定の退職金がある場合も夫婦の同居期間に対応する部分については財産分与の対象である共有財産とされます。また、役員の場合は退職慰労金制度の有無や支給実績もあわせて確認しておくことが重要です。

 

財形貯蓄

財形貯蓄とは、給与から予め決めておいた一定額を天引きして、会社がその額を金融機関に払い込むことで貯蓄を行う制度で、会社が福利厚生の一環で導入していることがあります。用途により一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄と分けられますが、財形年金貯蓄と財形貯蓄年金については利子等に一定の非課税措置があることから、特に一般の従業員より手取りの多い管理職や役員は活用しやすい制度であるといえます。

 

この財形貯蓄についても夫婦の同居期間に対応した部分が夫婦の共有財産として財産分与の対象になります。

 

✅株式

所得の高い管理職や役員の方は、資産の形成手段として自ら上場株式を購入したり、会社の持株会制度を利用し、自社株を給与天引きで積み立てていたりすることがあります。こうして得られた株式についても、夫婦が同居していた期間中に取得した部分については財産分与の対象になります。

 

婚姻前から継続して取得しているケースもあるので、財産分与の際は「いつ何株を取得したか」を確認したうえで対象となる範囲を確定し、そのうえで「評価時点をいつにするのか」「非上場株か上場株か」といった点も考慮して具体的にいくらを分与するのか評価額をつけます。

 

株式報酬

管理職・役員を務める方に対しては、通常の給与や報酬とは別にインセンティブとして、一定期間の業績目標の達成度に応じて株式を交付されたり、一定期間の譲渡(売却)制限付きの株式を割り当てられたり、あらかじめ決められた価額で一定期間内に一定数の自社株式を取得できる権利(新株予約権、ストックオプション)を付与されたりすることがあります。

このように株式の形で得られる報酬はまとめて株式報酬と呼ばれますが、付与されるための条件、権利行使するための条件、譲渡制限が解除される条件などが会社により個別に設けられていることが一般的です。そのため、株式報酬を財産分与の対象に含めてよいかどうかは各々のケースの具体的な事実関係をもとに検討しなくてはなりません。

 

✅投資信託

投資信託とは、「不特定多数の投資家から集めた資金を専門家がまとめて投資・運用し、その運用成果を投資額に応じて分配する」という金融商品で、会社の管理職・役員の方はこのような投資信託に投資をしていることも珍しくありません。

この投資信託も夫婦の同居期間中に取得したものであれば財産分与の対象になりますので、取引口座や残高報告書といった書類を取得し、対象となる範囲を判断する必要があるほか、評価基準日をいつとするかも協議することになります。

 

✅生命保険

死亡時に保険金が支払われる生命保険の中でも、貯蓄性のあるもの、すなわち保険料の一部を積み立てて運用する「積立型」の生命保険には、解約した場合に解約返戻金が発生するものがあります。この解約返戻金が発生する内容の生命保険は財産分与の対象となり、実際には基準時(別居開始時)で解約した場合の解約返戻金額を分け合うことになります。

 

ただし、婚姻前から加入していた生命保険がある場合は、婚姻前に支払っていた保険料に相当する部分は特有財産とされ財産分与の対象から外れます。そのため、積立型の生命保険(の解約返戻金額)の財産分与にあたっては、保険証券で契約日および保険料を確認し、婚姻前の支払額を計算することになります。

 

不動産

婚姻後に取得した不動産は、その名義に関わらず財産分与の対象となります。管理職・役員の離婚の場合で、地価の高い地域に住んでいるようなケースだと高額な持ち家の扱いが問題になることがあります。

ただし、マイナスの財産である住宅ローンも同様に共有財産と扱われるため、まずはオーバーローンとアンダーローンのいずれの状態にあるかを確認したうえで、いずれかが住み続ける前提で残りの財産を分け合うのか、売却して得たお金を分け合うのかを決めることになります。

 

また、中には自宅のほかに投資用の不動産を所有しているケースもあります。このような投資用不動産が対象になるときは単純な時価だけではなく将来の収益性をも考慮した詳細な検討が必要です。

 

婚姻費用・養育費について

婚姻費用とは、夫婦が別居している間(離婚するまで)の生活費のことです。

たとえ別居中であっても、夫婦には互いに生活を支える義務があります。そのため、収入の多い側は収入の少ない側に婚姻費用を支払う必要があります。

また、離婚した後は夫婦間の生活を支え合う義務はなくなりますが、子どもの養育義務は監護親か否か、親権者であるか否かにかかわらず担い続けることになります。そのため、離婚に際しては養育費(子どもを監護するために必要な生活費や教育費)も重要な争点です。

 

具体的に支払う婚姻費用や養育費の金額については、家庭裁判所の算定表を参考に、夫婦の収入額に応じた月額で決めることが一般的です。収入が多い会社の管理職・役員の方の離婚のケースでは婚姻費用や養育費も高額になる傾向があるといえます。中には支払い義務者が算定表の上限を超える収入を得ているケースもありますが、そうしたケースでは個別事情に応じて調整して解決が図られます。

 

※算定表を超える収入のある方の婚姻費用・養育費の計算についてはこちらの記事もご覧ください。

>>『年収2000万円を超える方の離婚問題|養育費・婚姻費用の算定』

 

また、家庭裁判所の算定表で想定されている教育費は子どもが公立学校に通うことが前提となっています。そのため私立学校の学費、高額の月謝を払っている習い事などの特別費用を考慮した婚姻費用・養育費の加算が争われることも多いです。

 

管理職・役員の離婚問題を弁護士に相談するメリット

管理職・役員との離婚では、高額な財産分与や婚姻費用、養育費の取り決めが問題となりやすく、その前提としての評価方法が複雑な財産の調査と法的な検討が欠かせません。また、相手方が財産を十分に開示しないケースや、会社との関係から財産の全容を把握しにくいことも少なくありません。

弁護士に依頼すれば、資料の収集や財産調査、適正な評価方法の検討、相手方との交渉、調停・訴訟まで一貫したサポートを受けることができます。

 

少しでも有利な条件で離婚を成立させるためには、ぜひ弁護士にご依頼ください。時間や手間のかかる手続も弁護士に任せることができますし、夫婦間で争いがある場合でも離婚の争点に詳しい弁護士が代理人になれば、相手の主張や反論、提案に対する法的な見解、実務の判断傾向を踏まえた助言を受けながら協議・交渉を進めていくことが出来ます。

 

管理職・役員との離婚のお悩みは弁護士法人リブラ共同法律事務所へご相談ください

管理職・役員の離婚では、一般的な離婚事件以上に専門的な知識と経験をもとに考えるべき点が多くあります。当事務所では、退職金、株式、生命保険などの多額の資産が対象となる財産分与のケースや高額な婚姻費用・養育費が算定されるケースの離婚についても豊富な解決実績があります。

弁護士法人リブラ共同法律事務所では、累計4,000件以上(令和87月時点)のご相談実績をもとに、ご依頼者様一人ひとりの状況に応じた最適な解決方法をご提案いたします。また、必要に応じて税理士や司法書士などの専門家とも連携し、税務面や登記の問題が絡むケースでもワンストップでサポートしております。

管理職・役員との離婚は、早い段階で適切な準備を行うことが、その後の結果を大きく左右します。財産分与や婚姻費用、養育費などについて少しでも不安や疑問がある方は、まずは弁護士法人リブラ共同法律事務所までお気軽にご相談ください。経験豊富な弁護士が、将来を見据えた解決に向けて丁寧にサポートいたします。

監修者

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