「定年離婚」の際に考えておくべきこと

「定年離婚」とは?

法律用語ではありませんが、「定年離婚」という言葉があります。

これは文字通りご夫婦が定年退職をすることを機にする離婚を指します。婚姻期間自体が長いケースが殆どだと考えられることから、熟年離婚の一類型ともいえるでしょう。

 

こちらの記事では、これまで多数の離婚問題を解決してきた弁護士が、この「定年離婚」をお考えの方に知っておいていただきたいことについて解説いたします。

 

定年離婚のメリット・デメリット

(1)メリット

 離婚全般に言えることではありますが、やはり配偶者との生活の中で生じた悩みやストレスから解放されることが挙げられます。

特に定年後は、「相手が毎日家にいる」、「相手が家にいる時間が増える」という状況になりやすいです。

 

そのため相手の身体的・精神的な暴力、価値観の相違、浮気、義理の家族との不和…などから長年強いストレスを抱えてきた方にとっては、相手の定年退職というのは自身の今後の幸せを考え、いよいよ離婚を決意する強いきっかけの一つになります。

 

こうして相手に縛られずに第二の人生のスタートを切ることができることが、定年離婚の最大のメリットだといえます。

 

(2)デメリット

定年離婚をお考えの方からいただくご不安の声で一番多いのが、離婚後の生活についてです。

定年退職する相手と同じシニア世代の方には専業主婦(専業主夫)の期間が長い方や相手の扶養内でパートをしている方も多く、離婚後にご自身で収入を得よう(増やそう)としても、若い方と比べると中々思うような待遇での仕事に巡り合えないということはよくあります。

このように、生活レベルが低下してしまうリスクを負う点が、定年離婚のデメリットだといえるでしょう。

 

また定年離婚のケースではお子様がすでに独立していることも多いのですが、婚姻時よりも経済的に不安定になれば、お子様たちに頼ることになり「こんなはずではなかった」と後悔してしまう可能性も大きくなります。

 

 そのため、定年離婚に踏み切る前には、離婚後にご自身の収支がどう変化するかという点をシミュレーションし、生活資金を確保する方法について十分考えることが大切です。

 

定年離婚で後悔しないために考えるべきこと

離婚後の元配偶者との間に扶養義務はありません。

そこで、定年離婚後の生活が苦しくならないように予め相手と話し合っておくべきことについていくつか説明いたします。

 

(1)財産分与~「家」と「お金」、どちらの分与を受けるか?

 婚姻期間中に取得した財産は、夫婦双方の協力により得られた財産としてどちらの名義になっているかに関わらず夫婦の共有財産として、財産分与の対象となります。

 

 このとき、定年離婚をお考えのご夫婦の場合では「持ち家の住宅ローンを完済している、あるいは退職金で一括返済可能な程度に返済している」といったケースが多いです。

とはいえ、離婚したら別々に暮らすことになるわけですから、

✅どちらかが家を取得して、相手に財産分与割合(通常は半々です)相当額との差額を支払う

✅家を売却して得た金銭を分け合う

 

…のいずれかを選択することになります。

そして、多くのご家庭では自宅不動産の価値がご夫婦の財産の大半を占めています。定年離婚のケースなら退職金を含めた現金(預貯金)も財産分与の対象に入りますが、家の取得を希望すればこれらの金銭はほぼ相手に渡ることになるでしょう。逆にご自身は家を出て賃貸や実家等で暮らすということなら、相応の金銭の分与を求めることになります。

したがって、定年離婚のケースでは特に「離婚後にどのように生活していくか」という点を考えて、何を分与する(分与してもらう)かを話し合うことが大切です。

 

(2)年金分割

定年退職のタイミングで離婚するケースでは、その後の生活を考える際に「もらえる年金額」が重要な要素となります。

年金分割の基本は、夫婦双方の同居期間中の厚生年金加入記録(標準報酬月額・標準賞与額)を合わせたものを、夫婦の合意や裁判所の決定により最大で50:50の割合で分割する「合意分割」です。

なお平成20年4月以降の同居期間中に、厚生年金に加入している相手方の扶養に入っていた第三号被保険者であった期間があった場合は、この合意分割の手続が無くとも第三号被保険者であった方からの請求で当然に配偶者が婚姻期間中に納付した保険料の記録が夫婦で2分の1ずつ分けられ、結果として第三号被保険者が自分の年金として受給することができる年金額が増えることになります。こうした年金分割方法を「3号分割」と呼ばれています。

これらの制度により、専業主婦(専業主夫)の方やパートなどで働いてきた期間が長い方も、受け取る年金額を増やすことができます。ただし、いずれの方法による場合も年金事務所への請求は原則として離婚の翌日から2年以内にしなければならないことには注意しましょう。

 

 

定年退職を前に離婚を進めてよい?~考えるのは「退職金の財産分与」

  退職金がその後の生活資金として重要な位置を占める、というご家庭は少なくないと思います。定年離婚をお考えの方、中でもそれまで家事や育児を担ってきた方としては、相手の退職金の形成に貢献してきたとしてこれを分け合って新たな生活のスタートを切りたいというご希望があるのではないでしょうか。

 

もっとも、「財産分与の対象となる財産はどの時点で存在しているものか」という点については、財産の形成に貢献していた状況の終了時、すなわち別居開始時が基準となります(離婚が成立するまで同居を続けていたという場合は離婚時が基準となりますがこうしたケースは稀といえるでしょう)。

そのため、離婚に踏み切りたくとも「相手方が退職金を受け取ってから別居、離婚しないと財産分与を主張できないのではないか?」という疑問の声をいただくことがあります。

 

確かに退職金というものは一般に会社の存続・経営状況、そして従業員の退職時期や退職理由等によって支給の有無や金額が確定しないものです。このような、受け取れるか分からない金銭の分与を求めることは夫婦間の公平を害するため認められないのが原則です。

 

ですがその反面で、近い将来にその支払いの蓋然性が高い、つまり確実に支払われる見込みがあると認められる事情がある場合には、将来の退職金も財産分与の対象になると解されています。この蓋然性の有無の判断基準として最も代表的なものは離婚から退職までの期間で、裁判例ではおおむね10年以内であれば蓋然性が認められる傾向にあります(その他の考慮要素としては相手が会社員か公務員か、といった点などが挙げられます)。

 

そして、定年離婚と呼ばれるケースでは長くとも数年以内に退職時期が迫っていることが殆どですから、別居時において手元にない将来の退職金であっても、それまでの同居期間に相当する分については財産分与が認められるのが一般的です。したがって、定年退職前から離婚に向けて準備や話し合いを進めても退職金を分与されないという事態に陥ることはほとんど無いといえるでしょう。

 

 

定年を機に離婚をお考えなら弁護士にご依頼ください

定年離婚はそれまで考えていたご夫婦の老後の生活プランに大きな変化をもたらします。相手方からすれば定年という人生の節目を迎えるタイミングで離婚まで提示され「到底受け入れられない」という気持ちになることもあるようです。

そのため、定年離婚では「夫(妻)にどう打ち明けたらよいか分からない」「離婚すること自体に合意してもらえない」「話し合いをしようとしても避けられる」「財産の開示に協力してくれない」…、というケースも多いです。

さらに、財産分与についても、その対象となる財産が定年を迎えるまでに高額かつ複雑になりがちであることから、当事者間で揉めてしまい合意に至りにくい傾向にあります。

そこで、定年離婚をお考えの際は、なるべくお早めに弁護士にご相談いただき、必要な準備を進めていくことが重要です

 

(1)弁護士に相談するメリット

 離婚協議全般に言えることですが、長期間不満を感じてきた相手との話し合いとなると、中々冷静になれなかったり、あるいは話し合うこと自体に苦痛を感じてしまったりと、精神的にも負担がかかりがちです。

 ですが、弁護士が代理人になっていれば、協議を任せることができるのでこうした精神的な負担も軽減されます。また、定年離婚のケースで特に協議が長期化しやすい財産分与においても、個々のケースごとに最も適した解決方法について助言を得られますので、スムーズな離婚成立へつながります。

 

(2)離婚問題は解決実績豊富な弁護士法人リブラ共同法律事務所にご相談ください

定年離婚につき弁護士への依頼を決めた際は、離婚問題を熟知した弁護士をお選びいただければと思います。なぜなら、弁護士が取り扱う分野は離婚以外にも多くあり、弁護士それぞれに得意な分野があるからです。特に定年離婚のケースでは財産分与や年金分割などで特別に考慮すべき点がありますので、専門性を有する弁護士に依頼する必要性が高いと考えます。

弁護士法人リブラ共同法律事務所では、多数の離婚事件を解決してきた経験豊富な弁護士があなたをお助けいたします。離婚後に後悔しないために、定年離婚をお考えの方は、ぜひ当事務所へご相談ください。

 

 

監修者

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