有価証券(株式)の財産分与の方法とは?弁護士が解説

有価証券(株式)の財産分与

財産分与は,夫婦が婚姻中に築き上げた財産を清算する制度です。この対象財産には,株式等の有価証券も含まれます。

有価証券は他の財産に比べて金額の変動が大きくなる傾向があることから,その評価額について争われることが多い財産の一つです。

本記事では離婚時における有価証券,特に株式の扱いについて離婚問題に注力する弁護士法人リブラ共同法律事務所の弁護士が解説致します。

 

有価証券(株式)も財産分与の対象になる?

財産分与の基準時において夫婦のいずれかが保有する有価証券は,その名義がいずれにあるかにかかわらず,財産分与の対象財産となりえます。ただし,以下の点には注意が必要です。

 

(1)財産分与の対象となるもの

夫婦が有している有価証券のうち,離婚時の財産分与の対象となるのは以下の通りです。

✅夫婦が婚姻(同居)中に取得したものであること

 財産分与の対象になる財産は,夫婦が生計を共にしていた期間に取得されたものに限られます。

そのため,株式についても婚姻(同居)中に購入したもの,および同居中の共有財産を原資として別居後に購入したものが財産分与の対象になります。

 夫婦の一方が経営する会社の株式(自社株)についても,会社が婚姻後に設立された場合は原則として財産分与の対象となりますが,設立時の出資が婚姻前の資産からなされていれば株式も特有財産として財産分与の対象から外れる可能性もあります。

 

✅夫婦が協力して取得・運用してきたものであること

 婚姻(同居)期間中に取得されたものであっても,夫婦の協力によって得たものでなければ財産分与の対象となりません。

たとえ夫婦の片方が専業主婦(専業主夫)であり,働いている方の収入で購入した株式であったとしても,「専業主婦(専業主夫)が家庭を支えることでその収入を得られた」という協力関係を根拠に夫婦の協力が認められます。

 

(2)財産分与の対象とならないもの

✅婚姻前に取得したもの

 婚姻前から保有している有価証券は,夫婦の共有財産ではなく「特有財産」となり財産分与の対象とはなりません。

自社株についても同様で,夫婦の一方が経営している会社の設立が婚姻前であれば,原則としてその会社の株式は財産分与の対象とはなりません。

ただし,婚姻後の会社の維持・発展,事業の拡大に配偶者の寄与が認められるケースでは自社株の価値が増加した分について財産分与の対象とされることもあります。

✅夫婦の協力とは関係なく取得したもの

 婚姻(同居)期間中に相続や贈与により取得した財産は,夫婦の協力とは関係なく手に入ったものとして特有財産とされます。そのため財産分与の対象ではありません。

✅会社(法人)名義で購入・取得した株式

法人は法的に個人とは別人格と扱われます。そのため,夫婦の一方が経営する法人(会社)名義で購入した他の上場会社株式や法人(会社)名義で取得した他の非公開会社の株式については夫婦の共有財産の範囲に入らず,財産分与の対象になりません。

 

有価証券(株式)の評価の方法

有価証券は,11日評価額が変動しますが,どの時点の金額を対象とすべきでしょうか。

金額の変動のある財産を評価する基準時は,裁判に至った場合には口頭弁論終結時とされています。

このことからすると,イメージとしては,分与の直近の金額で評価するとお考えいただければよいと思います

 

(1)上場株式

上場されている株式であれば,証券取引所等で日々売買されているため時価は明確です。

そのため財産分与の際は株数×直近の株価で評価することも比較的容易といえます。

そして,分与の方法としては株の名義をそのまま移転(名義書換え)をする方法と,売却して現金化した額を分け合う方法があります。

 

(2)非上場株式

非上場株式とは市場に公開されておらず取引相場の無い株式を指すので,評価方法としては純資産価額方式(総資産や負債を相続税の評価に置き換えて評価した価額から負債や評価差額に対する法人税額等を差し引いた残額を基準とする方法),類似業種比準方式(類似業種の上場会社の株価を基準にしつつ配当金額,利益金額,純資産価額を考慮して修正する方法),配当還元方式(その株式を保有することで受け取る配当金額を基準とする方法)などが採用されます。

いずれの評価方法を選択するかによって財産分与の対象額も大きく変化しうるので,公認会計士等の専門家の鑑定に委ねるケースもあります。

 

(3)自社株

自社株についても,その会社が上場企業か非上場企業かに応じて上記の方法のいずれかで評価をすることになります。

ただし,会社経営者による自社株の保有は,単なる投資というよりは会社の経営権そのものとの結びつきを示しているといえます。

そのため,経営者が離婚して自社株をそのまま元配偶者に分与することは元配偶者による経営への関与というリスクの発生にもつながりかねません。そこで,自社株を財産分与する際は現金などの他の財産で渡す方法(代償分割)で対応するケースが多いです。

 

離婚時における有価証券(株式)の財産分与の流れ

✅財産の範囲を整理する

 有価証券を含めた夫婦それぞれの名義になっている財産について,どの資産(負債)が分与の対象となるかを確認することから始めます。株式であれば,取得時期や資金,運用状況について,資料を確認し整理しておくことになります。

 

✅評価額を算定する

 上場株式は時価で,非上場株式であれば純資産価額方式,類似業種比準方式,配当還元方式といった方法で評価を行います。

 

✅分与方法を決める

 有価証券をそのまま名義変更するか,有価証券を取得する側が他の財産で相手に相当額を支払うかを選択します。またこの段階で,有価証券の売却による譲渡所得税などの税務面の確認を要することもあります。

 

✅合意書の作成

 有価証券の財産分与は名義書換や譲渡の承認などの手続が必要な場合があります。

口約束だけで手続が後回しにされる等のトラブルが後で生じないよう,財産分与の際は分け方を明文化しておくことが推奨されます。法的拘束力を強めたいなら,公正証書化することも検討するとよいでしょう。

 

✅手続の実行

 取り決めた分与内容に応じて名義書換や売却(上場株式),株主名簿の書換えや会社の承認(非上場株式)といった手続を進めていきます。

 

有価証券(株式)の財産分与は弁護士法人リブラ共同法律事務所へご相談ください

「有価証券(株式)が財産分与の対象となるか」,「有価証券(株式)の価値をどう評価するか」といった問題はその名義や取得時期,運用状況や会社との関係なども絡んで複雑になりがちです。特に非上場株式や自社株は評価や処理が難しく争点化しやすいところでもあります。

このような有価証券(株式)の財産分与を含む離婚についてお悩みの際は,お早めに離婚問題に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めいたします。弁護士法人リブラ共同法律事務所では離婚問題の解決実績豊富な弁護士が有価証券の調査,評価段階から相手方との交渉,分与の手続きまで一貫したサポートを致します。安心して新たな一歩を踏み出すために,まずはお気軽にご相談ください。

 

 

 

監修者

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