熟年離婚をお考えの方へ|熟年離婚にまつわる疑問にお答えします
目次
一般的な熟年離婚の原因とは?
長年連れ添ったご夫婦が、
「結婚当初から相手との価値観の違いを感じていたが、我慢が限界に達した」
「子どもが成長し独り立ちして以降、夫婦の会話がなくなり寂しさを感じている」
「定年退職後、夫(妻)と一緒に家にいる時間が増えたことでストレスを感じる」
「結婚生活が長引くにつれ夫婦としてのスキンシップがなくなってしまった」
…などの理由で離婚を決意されるケースがあります。
厚生労働省の調査によると、令和3(2021)年の離婚総数18万4386件のうち、2割以上にあたる3万8958件が婚姻期間20年以上の夫婦による、いわゆる「熟年離婚」といわれるものです(もっとも、「熟年離婚」は法律などで明確に定義されている用語ではありません)。
※参考:令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況|厚生労働省
こちらでは、多数の離婚問題を解決してきた弁護士が、そうした熟年離婚をお考えになっている方がお持ちの疑問についてお答えいたします。
熟年離婚のメリット・デメリットは?
(1)メリット
熟年離婚に限ったことではありませんが、配偶者が原因の悩みから解放されることが挙げられます。
上述のような場合だけではなく、相手からの身体的・精神的な暴力や金銭問題、義理の親との関係、浮気、…など、婚姻期間が長くない夫婦でも起こるような問題をずっと我慢してこられたケースもあるでしょう。長年悩んできた問題が解決することで、体力のあるうちに新しい生活を始められること、我慢してきた趣味などに挑戦できることなどが熟年離婚の大きなメリットといえます。
(2)デメリット
反面、熟年離婚の場合は、「離婚後の生活が不安定になるのではないか…」という不安がつきまといがちです。
例えば、専業主婦(専業主夫)の期間が長い方がブランク等を理由に中々就職先が見つからなかったり、配偶者の扶養内でパートをしてきた方が正社員の仕事を探す際に年齢が高くなるほど就職活動が上手くいかなかったりする事態に直面することがあります。
また、生活が苦しくなった結果、すでに独立した子どもや親族に経済的援助を求めることとなり後悔してしまうケースも想定されます。同様に、自身に介護が必要となった際にも配偶者ではなく子どもたちに頼らざるを得なくなることも考えられます。このように子どもたちに大きな負担をかけてしまうリスクを負うということも、熟年離婚の見過ごせないデメリットです。
そこで、熟年離婚の際には、いかに今後の生活資金を確保するかという点を十分に考えることが大切です。
別居中、離婚後の生活費はどう確保すればよい?
離婚した元配偶者との間に扶養義務はありません。そのため、熟年離婚をお考えでも、
「長年家事や子育てに専念してきたため自分自身の収入がない」
「相手の扶養内でしか働いたことが無く、今の年齢で収入を増やせるか不安」
…など、別居中や離婚後の生活に不安を感じて離婚に踏み切れないという方も多くいらっしゃいます。そのような方が取りうる手段をいくつかご紹介します。
(1)婚姻費用の支払いを受ける
たとえ離婚を前提として別居を開始した場合でも、離婚をするまでは夫婦の収入が少ない方は配偶者へ婚姻費用の支払いを求めることが出来ます。
婚姻費用の金額については、一般的には裁判所が使用する算定表を目安に、夫婦それぞれの収入や子どもの有無・人数によって決めることが多いです。そのため、双方の収入資料をもとに話し合いをするのが基本ですが、「夫(妻)が自身の給料について教えてくれない」という場合など、協議が難しいと感じる場合には家庭裁判所に調停を申立て、調停委員に間に入ってもらうことも検討しましょう。
(2)扶養的財産分与が認められることも
婚姻期間中に取得した預貯金や不動産などの財産は、夫婦双方の協力により得られた財産として、いずれの名義になっているかに関わらず夫婦の共有財産とみなされ、離婚の際には財産分与の対象となります。
財産分与の割合は基本的に夫婦で半々、となることが一般的で、片方が専業主婦(主夫)というだけで「財産形成への貢献度が少ない=財産分与の割合が減らされる」、とされるわけではありません。
むしろ、通常の割合での分与では必要最低限の生活すら困難になると認められ、かつ相手に扶養出来るだけの収入がある場合には、収入が少ない方への援助という趣旨でより多くの財産分与を受けられるよう割合の変更が認められることがあります。このようにして行われる財産分与を「扶養的財産分与」といい、その趣旨に鑑みて、単に離婚時に多めの財産を渡すというケースだけではなく、経済的に自立できるまでの一定期間、例えば「半年間、毎月●●万円を渡す」というような継続的な方法で行われるケースもあります。
熟年離婚の財産分与における注意点:退職金の財産分与
財産分与の基準時(離婚が成立するまで同居を継続していたという例外的な場合を除き、原則として別居時となります)に既に配偶者に支払われた退職金がある場合は財産分与の対象となります。
注意すべきは、基準時において配偶者がまだ定年を迎えておらず支払われていない将来の退職金がある場合です。
一般に退職金は、会社の存続・経営状況、退職時期、退職理由等によって支給の有無や金額が不確定なものといえます。ですが、近い将来に受領できる蓋然性が高いと認められる事情がある場合には、将来の退職金を財産分与の対象になります。離婚後に支払いを受けるものでも分与を受けられる根拠としては、退職金の算定期間=勤続期間のうち、少なくとも婚姻中は滞りなく勤務を継続できたことに対して配偶者にも一定の貢献があるという考え方にあります。
なお、退職予定時期がまだ先で、配偶者が民間企業に勤務している場合は上記の蓋然性が高いと認められず退職金が財産分与の範囲外とされることもありますが、配偶者が公務員の場合は勤務先が倒産等により退職金が受給できなくなる可能性が皆無といってよく、退職時までの勤続年数に対応した退職金を受給できることはほぼ間違いないことから、退職金の支払いまで年数がある場合でも財産分与の対象財産とされやすい傾向にあります。
また、まだ退職していないタイミングで財産分与について取り決めるとなると、支払方法について争われることも多いです。実務上は、離婚時に配偶者に支払原資がないときには分割払いや、実際に退職したときの支払い、という内容で合意するケースが見られます。
熟年離婚をしたら年金はどうなる?
また、将来の生活設計を行うのに、「年金がいくらもらえるか」という点は欠かせない要素です。
ですが、厚生年金については基本的に社会保険に加入している方のみが受け取れるものです。そのため、長期間家事や子育てに専念してきた専業主婦(専業主夫)が受け取ることのできる厚生年金が少額であることが多いです。
ですが、厚生年金に加入している配偶者に扶養されていた第三号被保険者の場合は、離婚の際に配偶者との合意や裁判所で分割割合を決める手続がなくとも、当然に配偶者が婚姻期間中に納付した保険料の記録が夫婦で2分の1ずつ分けられ、結果として第三号被保険者が自分の年金として受給することが出来る年金額が増えることになります。こうした年金分割方法を「3号分割」と呼ばれています。
ただし、この3号分割の対象は、法改正があった平成20年4月以降の専業主婦(専業主夫)期間のみです。平成20年3月以前の期間については、協議や裁判所の決定による割合で年金分割を行う「合意分割」の手続が必要になります。
熟年離婚こそ弁護士に相談すべき?
一口に「熟年離婚」といっても、その原因は婚姻期間が長いだけにそれぞれのご夫婦により千差万別です。そのため、ここまでの説明もごく一般的なものでしかなく、実際にするべき具体的な主張・反論や集めるべき証拠はそれぞれの夫婦のご事情によって異なってくるものです。
また、熟年離婚は夫婦の老後の生活設計の大きな変動をもたらすものであり、財産分与の対象となる財産が高額かつ複雑になりがちであることから、夫婦間での合意に至りにくい傾向にあります。
そこで、熟年離婚をお考えでしたら、なるべくお早めに弁護士に相談のうえ、必要な準備を進めていくことが解決への近道です。
(1)弁護士に相談するメリット
離婚協議を試みても、長期間不満を溜め込んできた相手との話し合いはつい感情的になってしまったり、あるいは話し合うこと自体に苦痛を感じてしまったりと、なかなか気が進まないものになりがちです。
そこで、弁護士を代理人にたてておけば、夫婦間の感情的なぶつかり合いも最小限で済みますので、離婚条件を迅速に決め、離婚の成立を早めることにつながるだけでなく、相手と話し合わなければならないことによる心理的な負担も軽減させることができます。さらに、交渉のプロである弁護士の助けでより有利な条件で離婚が成立すれば、新しい生活への第一歩を安心して踏み出せることでしょう。
(2)離婚問題は解決実績豊富な弁護士法人リブラ共同法律事務所にご相談ください
熟年離婚につき弁護士への依頼を決めた際は、離婚問題に精通した弁護士をお選びいただければと思います。なぜなら、弁護士が取り扱う分野は離婚以外にも多くあり、弁護士それぞれに得意な分野があるからです。特に熟年離婚のケースでは財産分与や年金分割などで特別に考慮すべき点がありますので、専門性が高い弁護士に依頼する必要性が高いと考えます。
弁護士法人リブラ共同法律事務所では、多数の離婚事件を解決してきた経験豊富な弁護士があなたをお助けいたします。離婚後に後悔しないためにも、熟年離婚をお考えの方は、ぜひ当事務所へご相談ください。
監修者
- 弁護士法人リブラ共同法律事務所は離婚事件を中心に取り扱い、東京・札幌を中心に全国の皆様から多数の相談、依頼をいただいております。離婚についてお悩みのことがございましたら当事務所までお問い合わせください。
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