看護師の離婚問題について弁護士が解説

「看護師で離婚する人は多い」という声を耳にすることもありますが、看護師という専門職ならではの勤務形態・家庭環境・収入構造が、夫婦生活や子育てに影響してしまうケースがあるようです。

この記事では、看護師の方に特有の離婚原因や紛争の傾向、離婚時の財産分与、親権・養育費の取り決めにまつわる注意点等を、離婚問題に注力する弁護士法人リブラ共同法律事務所の弁護士がわかりやすく解説いたします。

 

看護師のよくある離婚要因

✅仕事への理解不足

看護師の日々の仕事は、病気やケガを抱える患者さんと向き合う大変責任の重いものです。

緊急の対応や急な残業が避けられないこともあり、肉体的にも精神的にも負担が大きいといえるでしょう。

それでも家庭ではパートナーに「帰ってくるのが遅い」「仕事を優先している」「もっと家のこともやってほしい」と理解してもらえず、関係が悪化してしまうことがあります。 

 

✅すれ違いが起こりやすい勤務体制

昼勤/夜勤、早番/遅番などシフト制の勤務形態で働く看護師は、配偶者と生活リズムを揃えたり休日を揃えたりすることが難しく、すれ違いが生じやすい傾向にあります。

こうして夫婦としてのコミュニケーションをとる機会が減ってしまうことが離婚を考えるきっかけとなってしまうケースがあるようです。

 

✅家事・育児のワンオペ化

シフト制で働く看護師の方にとっては、日々の家事はもちろん、保育園の送迎や行事の準備、定期健診などお子様のスケジュールにあわせた対応についてはパートナーといかに協力できるかが大切です。

それにもかかわらず配偶者にその意識が欠けていてワンオペ化してしまうと、その不公平感が離婚の理由となることがあります。

 

✅経済的に自立している

看護師は全国的に見ても需要が高い仕事で、安定した収入が得られる仕事のひとつです。

そのため、離婚後の生活がイメージしやすく、経済的な不安が離婚を踏みとどまらせるような状態には比較的なりにくいといえます。このことが、「配偶者との関係改善」よりも「離婚」を選択しやすい傾向を生んでいるようです。

 

同業夫婦の傾向

配偶者も看護師、または医師等の同じく医療現場に携わる業種である場合、互いの勤務の辛さなどを理解し合えるメリットもありますが、双方が不規則な働き方をしていることで休みが合わずコミュニケーション不足に陥ることや、家事育児をめぐるすれ違いが生じやすいというリスクもあります。

特に親権・監護権が争われる際には互いに夜勤などを持ち出し「夫(妻)には育児を任せられない」と主張し合うような状況につながるケースが散見されます。

 

異業種夫婦の傾向

配偶者が看護師の仕事内容や働き方の特殊性を理解しづらく、家事や育児の時間的・精神的負担を察してもらえないことが夫婦の衝突につながるケースが多いようです。

また、同業のケース以上に「子どもの生活リズムが乱れる」などの指摘を受け親権が主要な争点になりやすい、看護師側の収入の方が高い場合に婚姻費用・養育費に関する争いが起きやすい、という傾向もみられます。

 

看護師の離婚における財産分与

財産分与とは、夫婦が婚姻期間(同居期間)に協力して形成した共有財産を分け合うことをいいます(民法第768条)。この分け合う割合は原則、2分の1ずつとされています。

 

奨学金の扱い

特に若い世代の看護師の方の離婚では、返済中の奨学金の取り扱いに留意すべき場合があります。

財産分与の対象となるのは夫婦の相互協力の下で築き上げられた「共有財産」で、婚姻期間(同居期間中)に生じたものであれば負債=マイナスの財産も共有財産に含まれます。一方、婚姻前に取得した財産、婚姻前に生じた負債についてはそれぞれの「特有財産」として財産分与の対象とは区別されます。

学生時代の奨学金についても、通常は結婚前にその貸与期間が終了(=返済義務が発生)しているものと思われます。そのため、離婚時に残っている返済分は特有財産として離婚時の財産分与の対象にはならず、全て貸与を受けた方が引き続き返していくべきものとして扱われます。

 

すると、配偶者からすれば「結婚してからは夫婦の給与から返済していたのだから財産分与の際にこれまでの返済分を共有財産に戻して欲しい」という主張もなされそうですが、奨学金の存在を認識して結婚していた場合は家計から相当額が返済に充てられることは当然想定されるため、このような主張は認められないのが一般的な実務の扱いです。

ただし、結婚の際に奨学金の返済が残っていることを秘匿していた、あるいは実際の残額よりも極端に少ない金額を伝えていながら家計から返済をしていたようなケースでは、例外的に離婚時に返済分を共有財産に戻したうえで財産分与の計算がなされる余地があります。

 

退職金の扱い

比較的年齢が高く、婚姻期間の長い看護師の方の離婚では、退職金の扱いが問題になることがあります。

退職金はその「給与の後払い」としての性質から、それまで支払われてきた給与同様に財産分与の対象となります。

また、まだ退職していない場合の「将来の退職金」についても、勤務先に退職金制度の定めや支給実績があるなどして自身にも退職金の支給蓋然性が認められる場合には支給予定額が財産分与の対象になります。看護師として安定した収入を長期間得てきた方だとその分だけ退職金も大きな金額になることが想定され、離婚時には相手方から分与を求められる側になることもあります。

ただし、財産分与の対象となるのは就業期間のうち婚姻期間(同居期間)に相当する割合分のみです。

分与を求められた際は勤務先の退職金規定なども参照し、過大な請求をされていないか確認する必要があります。

 

看護師の離婚における親権・養育費問題

親権や監護権で争いが生じやすい理由

夜勤があることで裁判所に「育児が難しいのではないか」と誤解され、親権や監護権が争われると不利になってしまわないか心配する看護師の方が多くいらっしゃいます。

しかし、夜勤があるからといって直ちに親権や監護権の獲得に不利になるわけではありません。家庭裁判所ももちろん監護親の勤務状況も考慮しますが、子どもの生活環境、預け先の確保状況、監護補助者の有無なども同じように重視し総合的な評価をしています。

そのため、もし調停などで争うことになっても、勤務調整や延長保育の利用、実家の援助など育児体制を整えていることを説明することで、親権・監護権で有利な判断を得られる可能性は十分にあります。

 

養育費が争点になる場合のポイント

養育費の金額は、夫婦双方の年収を計算したうえで、家庭裁判所が用いる基準(算定表)に沿って算出されることが一般的です。

ですが看護師の場合、収入は比較的安定しているといえるものの、夜勤の回数・頻度により大きく変動する面もあります。そのため、子どもを引き取って育てる側になったとしても、相手方から年収を過大評価され適正な養育費の支払いを渋られることが協議の長期化をもたらすことがあります。

実務では、夜勤手当など変動部分がある方の場合は、平均的な収入を求めたうえで養育費の計算するのが一般的です。

そこで、直近の勤務状況や平均的な夜勤の回数、離婚後に育児のため夜勤を減らす予定である場合はその後の収入の見込額について、客観的資料を基に丁寧に主張する必要があります。

 

婚姻費用が争われるケース

婚姻中の夫婦には婚姻費用(生活費)の分担義務があり(民法第760条)、夫婦が別居している場合には生活レベルに差が出ないよう収入が高い側が配偶者に婚姻費用を支払う必要があります。

看護師の方の場合、夜勤手当を高く見積もられて「婚姻費用の支払いを拒まれる」、「(支払う側になっているときに)婚姻費用が過大に算定される」といった問題が生じることがあります。

上述の養育費を争う場合と同様、これまでの平均的な収入や別居後の勤務予定などを証拠に基づき主張していくことが大切です。

 

看護師の方が離婚問題を弁護士に依頼するメリット

✅親権・養育費・財産分与で不利になりやすいポイントを回避し、主張を整理できる

これらの争点では看護師特有の事情を踏まえた主張や証拠整理を行うことがより良い解決の鍵となります。

弁護士にご依頼いただければ、相手方からの過大な主張や誤解に基づく主張に対しても、ご依頼者側の勤務の実態、保育の体制など、個々の事情を丁寧にうかがい、法的に整理して相手方や裁判所に正確に伝えることができます。

 

✅勤務が忙しくても迅速に適切な手続へ移行できる

話し合いが難しい場合でも、調停・審判・訴訟へスムーズに移行できます。

看護師としての勤務が不規則で平日昼間に時間を取るのが難しいという方も、弁護士にお任せいただければ代理人として書類の作成・提出を行い、調停期日当日の対応もサポートいたしますので仕事への支障を最小限に抑えながら手続きを進められます。

 

看護師の離婚は当事務所にお任せください

看護師の離婚問題は、勤務体系、収入構造、育児環境など、一般的な離婚より複雑になりやすい傾向があります。

また、「今は育児に専念しているがひと段落したらまた看護師として働きたい」「離婚後は実家に戻り、夜勤を増やす予定」「定年まで看護師として勤め上げた」という元看護師の方や仕事を一時的にセーブしている方からも同様に、親権や養育費、財産分与に関するご心配の声をいただくこともございます。

弁護士法人リブラ共同法律事務所では、看護師・元看護師の方の離婚問題についても解決実績豊富な弁護士が離婚後の新生活の一歩がより良いものとなるようサポートいたします。お一人で抱え込まずに早めに初回無料相談をご利用ください。

 

監修者

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